ワンリーは一瞬目を見張った後、声を上げて笑い始めた。そしてメイファンの頭をぐしゃぐしゃとなでる。

「おまえの言うとおりだ。俺としたことが、判断を誤っていた」
「すみません。差し出がましいことを」

 言葉が過ぎたことを恐縮してメイファンはうつむく。その頭をワンリーはポンポンと叩いて顔をのぞき込んだ。

「よい。気にするな。それでこそ王の妻だ。ではメイファン、龍玉を譲ってもらえるか?」
「はい。ワンリー様のために役立てるなら、母も納得してくれると思います」

 顔を上げて差し出したお守り袋をワンリーは受け取る。

「このお守りの分までおまえの身は俺が守ろう」

 そう言ってもう一度頭をなでると、ワンリーはお守り袋をジャオダンに渡した。ジャオダンはそれを両手で受け取り、メイファンに深々と頭を下げる。

「ありがとうございます、メイファン様。ありがとうございます」

 ひとしきり礼を言った後、ジャオダンはお守り袋を懐にしまった。そしてワンリーに軽く頭を下げる。

「では、私はシェンザイに戻って作業に取りかかります。合間にホァンロンの話も聞いておきますので、しばしお待ち下さい」
「わかった。頼んだぞ」
「御意」

 そしてジャオダンは背を向けて聖獣殿の方へ駆けていった。ワンリーはその姿が見えなくなるまでずっと見つめている。メイファンもその隣で見つめる。
 少しして聖獣殿の上空に黒い麒麟の飛び立つ姿が見えた。たぶん他の人には見えていないのだろう。その姿を見届けて、ワンリーはメイファンを促して鍛冶屋に引き返した。