ハッと我に返ったジャオダンが反論に出た。

「ワンリー様、それではどれだけ時間がかかるかわかりません。事は急を要するはずです。テンセイの聖獣殿が封鎖されたままでは、帝都が魔獣の手に落ちるのも時間の問題。ここは、メイファン様の玉をお譲りいただくのが得策かと」

 確かにその通りだと思う。メイファンが玉を袋に戻してジャオダンに差しだそうとしたとき、その手をワンリーがつかんだ。そして毅然としてジャオダンに言う。

「ならぬ。この玉はメイファンの大切なものだ。母君がメイファンの身を守るために授けたもの。だいいち、この大きさでは十分な補強ができないのではないか?」
「失敗さえしなければ、この大きさで十分です。私は失敗しない自信があります」

 きっぱりと言い切って、ジャオダンはワンリーをまっすぐに見つめる。ワンリーもそれを強い眼差しで見つめ返した。
 このままどちらも退きそうにない。メイファンは手をつかんだワンリーの手に自分の手を乗せた。

「ワンリー様。どうかこの玉を使ってください」
「しかし、おまえは手放したくないのだろう?」

 ためらっていたことを見透かされていたらしい。メイファンはゆっくりと首を振り、ワンリーを見つめる。

「はい。でも、これが龍玉なら話は別です。ジャオダン様の言うとおり一刻を争うのなら、他を当たるより、たとえ大きさが不足していてもこの玉とジャオダン様の腕に賭けるべきです。ガイアンの安寧を守る聖獣王ともあろうお方が、私の私情ごときに流されてはなりません」