参道から都の大通りに抜けると、そこには活気に満ちた町並みが広がっていた。テンセイが静まりかえっていたので、なんとなくホッとする。
 シンシュほどではないが通りには人の姿が多くあり、あちこちから金属を叩くようなキンキンとした音が響いている。農具や調理器具などを売る金物屋や武器屋も軒を連ねていた。

 通りを少し歩いて、ジャオダンは金属音の響く鍛冶屋の看板を下げた店に声をかけて入っていく。メイファンたちが後に続いて店の中を覗くと、金属音が止み、奥からジャオダンより若干若く見える壮年の男性が現れた。
 髪を短く刈り込み、日焼けというより火焼けだろうか。肌は浅黒い。首にかけた手ぬぐいで額の汗を拭いながら、男性はジャオダンに人懐っこい笑顔を向けた。

「よぉ、ジャオダンじゃねぇか。どうした?」
「チェンヂュ、今日はちょっと折り入って頼みがあって……」

 そう言ってジャオダンは、ワンリーとメイファンを紹介する。そして事情を説明し始めた。
 それによると、ワンリーとメイファンはジャオダンが世話になっているお屋敷の主で、テンセイに所用で行ったら無実の罪で投獄され、処刑されそうになったから隙を見て逃げ出して来たという。事実とは若干異なるが、そういうことにしておくとして、メイファンたちも黙って話を聞く。
 話を聞き終わったチェンヂュは、特に疑うこともなく納得してくれた。

「最近テンセイじゃそういう事が頻繁に起こってるらしいな。お二人も災難でしたね」

 そう言ってメイファンたちに同情してくれる。ここぞとばかりにジャオダンが本題に入った。

「それで俺が身元を保証する書状を取りに行っている間、ふたりをかくまってくれないか?」
「あぁ、いいとも。俺は独り身で二階がまるごと空いてるから自由に使ってくれ」

 二つ返事で快諾して、チェンヂュは奥に見える階段を指さす。それを聞いてワンリーはチェンヂュの手を両手で握った。

「すまない。恩に着る」
「ありがとうございます。しばらくお世話になります」

 そう言ってメイファンも頭を下げた。