大きくため息をついてワンリーは立ち上がった。それに続いてメイファンとジャオダンも立ち上がる。

「ここで考え込んでいても埒が明かない。龍玉のことは龍に聞くのが手っ取り早いだろう」
「龍の居場所がわかるんですか?」

 尋ねるメイファンにワンリーはニヤリと笑う。

「俺は聖獣王だぞ。聖獣の居場所は把握している」
「あ、そうでした」

 確かに龍も聖獣だった。青龍(チンロン)はテンセイの守護聖獣でもある。だがチンロンは今、結界に閉じこめられて会うことはできない。他の龍ということなのだろう。近くにいるのだろうか。

「最高位の龍がシェンザイにいるんだ。彼なら何か知っているかも知れない」

 ワンリーの言葉にすかさずジャオダンが反応する。

「ホァンロンですね。私が聞きに行ってきましょう」
「頼めるか、ジャオダン。俺はメイファンのそばを離れるわけにいかないのだ」
「もちろんです。剣を打つのは私ですから、私が聞くのが一番だと思いますよ」

 ジャオダンはにっこり笑って快諾する。

「私が戻るまでこちらでお待ちいただけますか?」

 結界に守られた聖獣殿はロショクの中で一番安全だろう。しかしワンリーは首を振った。

「いや。宿に泊まろう。テンセイのように呪詛結界を張られて閉じこめられたら厄介だ。奴らも聖獣殿を真っ先に標的にするはずだ。探しにくい場所に隠れた方がいい」
「そういうことでしたら、町に知人の鍛冶師がいますので、彼に事情を説明してしばらくお世話になりましょう。人のフリをして探しに来るなら、宿より見つかりにくいと思いますよ」

 いたずらっぽく笑うジャオダンに、ワンリーは目を見張る。

「人に知り合いがいるのか?」
「あれ? 話してませんでしたっけ? 時々、人の流行や技術交流を目的にロショクで学んでたんですよ。私が聖獣であることは内緒ですけどね」
「時々シェンザイから姿を消すのはそういうことだったのか。てっきり材料でも調達しに行っているのかと思っていたぞ」
「いやぁ、思い立ったらすぐ動いてしまう質(たち)なもんで。報告が遅れてすみません」

 まったく悪びれた様子もなく、ジャオダンは笑いながら頭をかいている。どうも奔放な性格のようだ。けれどなぜか憎めない。それはワンリーも同じみたいで、苦笑しながら見つめていた。

「じゃあ、おまえの知人に世話になるか。案内してくれ」
「はい」

 ジャオダンは先に立って聖獣殿を出ていく。メイファンもワンリーに手を引かれてその後に続いた。