世界の中心にそびえ立つ聖なる山、シェンザイ。雲海をはるか下方に見下ろすその頂には、世界を守護する聖獣の王が住む城がある。

 人の進入を許さぬその城で、人の姿に変化した聖獣たちが人の住む下界を見守っていた。
 霊体である彼らは大きな聖獣の姿でいるより、小さな人の姿でいる方が霊力の消費を抑えられるからだ。

 真っ白な部屋にある金の玉座には、聖獣たちを統べる王が座して物思いにふけっている。
 そこへ静寂をやぶってひとりの武官がやってきた。

「ワンリー王」
「あぁ。門が開きかけている」
「お気づきでしたか。いかがいたしましょう」
「四聖獣を集めろ」
「御意」

 恭しく頭を下げて、武官は退室する。そして程なく、四人の聖獣を伴って現れた。
 ワンリーは席を立ち下知する。

「魔獣の門が開こうとしている。そなたたちには四方の守護聖獣の援護に向かってもらいたい。ソンフーはテンセイへ。エンジュはシンシュへ。ジャオダンはロショクへ。そしてソミンは俺と一緒にビャクレンへ。すぐに発て」
「御意」

 四聖獣たちはそれぞれ、指定された都へ向けて旅立った。
 ワンリーもすぐにソミンを従えて部屋を後にする。

 部屋を出る間際、残された武官に声をかけた。

「ホァンロン、留守を頼む。長い旅になりそうだ」
「かしこまりました」

 城を出てビャクレンへ向かうワンリーの胸は次第に高鳴っていく。
 ようやくあいつに会える。そう思うと自然に笑みが浮かんだ。