田邊君が私を慕ってくれているのは知っていた。 だが、それは先輩として慕ってくれているに留まるのが当たり前というか私の固定観念だった。 私をああいうふうに好いてくれているとは思ってもいなかった。 私が残り一口のカクテルを飲むと、龍二さんが私の隣の席を見ながらお会計は彼が済ませたよ、と伝えてくれた。 龍二さんの視線につられて私も隣の席を見た。 そこには、一粒のオリーブの実が寂しくグラスに残されていた。