紗希もよく仮病をつかった。
宿題が山のように出たときなんかは仮病をつかった。
そんなことはママも承知である。
嘘にのっているのだ。
もちろんそんな子ばかりではない。
が、
そんな子は多い。
愛美は本当にアヤちゃんのことを心配している様子だったが、
ママはそれほどでもない。
ママはわかっているのだ。
少し沈黙が続き、
そしてその沈黙を破ったのはママだった。
「ねえ、紗希ちゃん、今日はこれから仕事?」
「いいえ、今日は完全にオフです」
愛美は怪訝そうにママと紗希を交互に見つめている。
「紗希ちゃん、突然こんな事言ってごめんなさいね、
気を悪くしないでね」
「はあ・・・」
「さっきの話聞いてたかもしれないけど、
店の女の子が突然休むって電話があって・・」
「はい・・」
「紗希ちゃん、今日1日だけでいいから手伝ってもらえないかしら・・」
「えっ!?」
ママの提案に驚いた。
「いや、私なんて足手まといになるだけですから・・・」
「いいの、座って話だけしてくれればいいから」
「そんな・・・無理です。ママの顔に泥を塗るようなマネ
できません」
「紗希ちゃんは1回でもこういうところで働いたことない?」
「はい、ありません」
紗希は嘘をついた。
「ごめんなさいね・・気にしないでね・・」
とママは言ったが携帯を見て、今日休みの女の子に電話をかけはじめた。

