紗希は人には話してないが、昔、六本木で働いていたことがある。
水商売の大変さはイヤというほど知っていた。
看護大学在学中にバイトをしていた。
愛美も含め、他の学生たちはわりと家が裕福だったため、
学費は親に出してもらっていたが、
紗希の家は、弟の大学進学の費用で精一杯だった。
そのため六本木でバイトをしながら自分で学費を払っていた。
大学の講義が終わるのが16時、そこから仕度をして出勤。
お酒を飲み、酔った客の相手をし、帰って宿題。
睡眠時間は3~4時間。
それだけならまだいい。
嫌な客との同伴、アフター。
指名を取らないといけないのでそりゃあもう大変。
その時はお金の為に我慢をしてたが、看護師の免許も取り、
給料も他のOLよりはたくさんいただける。
今はする必要がない。
「やっぱりダメ?」
「うん!」
その会話を最後に2人は店を出た。

