「愛美・・変わったね・・」
「そう?」
いつだったか大ちゃんが福岡に転勤になることを
紗希に打ち明け号泣した愛美とは全く別人だ。
すると愛美は新作のヴィトンのバックから、
シャネルのシガレットケースを取り出した。
(すごい!)
シャネルのシガレットケースから細くて長いタバコを
取り出し100円ライターではないライターでタバコに
火をつけ吸いだした。
「愛美、タバコ吸ってたっけ?」
「たま~にね」
細い指に少しだけ伸びた爪、その爪にはマニキュアが
きれいに塗ってあり、
煙を出す横顔は以前の愛美ではなかった。
紗希はタバコと100円ライターを出した。
紗希はこれ以上、何も、愛美に聞かなかった。
愛美の方から一方的に病棟のことを聞いてきて
それに答えるだけ。
「ねえ、明日、なに?」
看護師の間ではこの会話は勤務内容のことである。
日勤か準夜か深夜か。
「休み」
「じゃあ、もう1軒いこうよ!」
「愛美は仕事でしょ?」
「有給とった!」
「おごって!」
「うん・・・・」
本当は断りたかったが利子つきの35万円を受け取って
しまった後である。

