チラリと男の子の胸のネームプレートを見る。

天野 國比呂…読みはともかく、変わった名前ね。

「國比呂君っていうのね。私は三条 佳奈美(さんじょう かなみ)。OLしてるの」

「そうなんですかぁ」

給油の合間に車のフロントガラスをせっせと拭く國比呂君。

やがて給油が終わり、お金を払って出ようとすると。

「あれ、お連れの男性いませんけど、待たなくていいんですか?」

國比呂君に呼び止められた。

勿論私は1人で運転してるし、助手席にも後部座席にも、屋根の上やトランクの中にもいない。

ストーカーされるほど、私は美人ではない。

『そんな人は乗ってない』と言うと、國比呂君は首を捻ったまま車を誘導する。

でも何か事情があるのだろうけど詮索はしませんよ、みたいな顔を向けられた。