タヌキが上を向きながら腕組みしながら考えている。

犬神は、お堂の木でできた床を1本の指でカリカリ掻いている。

キツネは、体育座りで犬神のカリカリしているのを遠い目で見ている。

「誰か何か喋らんか?」

タヌキが言葉を発した。

犬神は、まるで負け犬のような表情でタヌキを見る。

キツネは、相変わらず犬神の指先を遠い目で見ている。

タヌキは、頭を掻きながら言った。

「ぬ~…我々、妖怪はやはり夜に出るべきやと思うし、幽霊に対抗して昼に出るってわけにもいかないしなぁ。」

犬神が言う。

「そう言えば最近、黄昏時とかカワタレドキなんかは、誰が出てたりしてるかじゃ?」

キツネがボーっとしながら言う。

「オオマガドキって言いながら、妖怪が出てないってのも変な感じですね。」

タヌキがまた腕組みして言う。

「オオマガドキから妖怪が撤退した理由を知ってるか?」

キツネと犬神がタヌキに目線をやる。

タヌキは続ける。

「人間が鈍感すぎるからだ。」

キツネが聞く。

「どーゆーこと?」

タヌキは、キツネを見ると続ける。

「人間は、都会という所に集まりやすい習性があるようで、そこで妖怪がいても人波の間の怪異を気付くことが出来なくなってるみたいやねん。」

犬神が言う。

「それって、致命的なことじゃないかにゃ?」

キツネも言う。

「我々は、人間に認知されて存在できるのに、人間が妖怪を気付かなければ…」

タヌキが言う。

「その通り。これはもう絶望的なんや…実際、妖怪の数が減るのは仕方ないかも知れん。それでも今、いてる妖怪ぐらいは何とか生き残らんと!」

犬神が言う。

「やはり、自然がないと厳しいのかじゃ?暗闇や、静けさ、自然を畏怖する人間の心、それを今まで守ってきた神と我々妖怪がここまで窮地に追い込まれることになるとはな…」

タヌキが言う。

「河鍋曉斎や、柳田國男が死んでから妖怪は数を減らしてる。これからは死に物狂いで生き残らないとあかんわけや!」

キツネが正座になりながら言う。

「小さなことからコツコツ始めないといけないでしょうね。」

三者は、ウンウンと頷く。