「どうかしたの?」
いつの間にか、長井は電話を終えて、こっちを見てる。
「ちょっと、処理待ち中」
長井が、こっちを見ながら近づいてくる。
来なくていいってば。
「でも、それ変じゃない?さっきから画面変わってないよ」
ずっと、見てたの?
「まあ、古いから……」
「いや、そう状態じゃなくない?もう電源入れ直したの?」
「ああ、えっと。そう。でも、ダメみたい。システムにかけてみる。五十嵐君いるかな」私は、電話にてを伸ばそうとする。
「ちょっと、待って」
長井が椅子を放り出して、こっちに来た。
私がパソコンから離れる前に、彼の方が身軽にさっと後ろに回り、私の体に覆い被さって来た。
「これ、いいかな」
「うん」
私は、パソコンのことだと思って、椅子から立ち上がろうとした。
それなのに、彼が身を引かないから、私の頭のてっぺんが、彼の顎に触れた。
「亜湖、座ったままでいいよ」と言われて、彼の大きな手が私の肩に置かれ、椅子に留まるように上から押さえつけてる。
「これ、どのくらい待ってたの?」
そんなことより、しっかり握るように、私の肩をつかんでる手、放してくれないかな。
抱きしめられてるみたいで落ち着かないんだけど。


