課長は、しばらく私の顔をじっと見ながら考えていた。

「あのさ……なんで、付き合う振りなの?振りなんて面倒じゃないか。
そんなことしないで、本当に付き合えばいいじゃないか」

課長は、面白がってる。
本気なのか、冗談なのか、顔の表情からは全く分からない。


「付き合う……ですか?」


付き合うって、長谷川課長と?

ち、ちょっと、冗談ですよね??

私、からかわれてます?


「そう。冗談じゃなくて本当に付き合うの。だって……もう、話聞くのも面倒だから言っちゃうけど」


課長は、面白そうに前に乗り出して来た。

課長は、続ける。

「ケンカ別れした元カレが戻って来て、隣の席になって、そいつが、君にいろいろ干渉してきて、鬱陶しいってことだろ?

だったら、俺と付き合う振りなんかしないで.本当に付き合っちゃえば、そいつ、何も言わないで.引き下がるだろう?」


私は、目を大きく見開いて、口をパクパクさせて、課長に何か言わなきゃと思っていた。


「その通りですけど……あの……」



「振りなんてするより、本当に付き合った方が、はっきりそいつに諦めさせることができるぞ」