「すみません」
「ああ、ごめん。謝らないでよ。気分を害したなんて、少しも思わないから。大丈夫だから」
「課長、私から話があるって言われたとき、こういう話をされるって思わなかったんですか?」
「ああ、そうだね。仕事の話だと思った。だから、不覚にも、完全に君にやられたよ」
課長は、すでに畳の上で胡坐をかいて、くつろいでいた。
「なんだ。もっと早く試してみればよかったなあ。課長を慌てさせるなんて不可能だと思ったのに」
「おい、ふざけてやったら怒るぞ。それと、不意打ちはやめろよ。寿命が縮まる」
「すみません。驚かせて」
「いいさそんなの。それより、不満があるとしたら、どういうことだ?
付き合ってほしいんじゃなくて、付き合う振りなんかして欲しいだなんて」
課長が、お返しに言う。
やっぱり、この人と話すのは楽しい。
「はい」
私は、誰だとは告げずに3年前のことから話し始めた。


