ちょっと待って、私、そんなこと言われなきゃいけないの?
なんで、長井に指摘されなきゃいけないのよ。
「私のこと心配してくれる役目は、長井じゃない。そういう役目の人、もう別にいるから」
つい、かっとなってしまった。
だから、一番長井を怒らせるようなことを言った。
「ああ、そうだな。もちろん、俺が心配することじゃない。でも、気になるんだ。そんな風に必死で自分で立とうとしてるのを見ると、手を出して支えてやりたいと思う」
長井の顔がいつの間にか、キスされるのかと思うほど近づいてきてる。
彼の顔が触れそうな距離に。
「なに言ってるの?今さら何でそんなこと言うの?私のこと支えてどうするつもりなの?また、大事な時に、手を放すの?」
「亜湖、ごめん……ひどいことしたと思ってる。謝っても、俺がつけた傷は、なくならないと思う。だから……せめて」
「いらないわよ同情なんか。そんなの絶対いらないから。
なんで今さら、長井に同情されなきゃいけないの?
よく見てよ。私、ちゃんと立ち直ってる。
誰かの助けなんかなくたって、大丈夫よ。
どうしてそうやって、中途半端に手を出そうとするの?」
「亜湖、落ち着いて。頼むから……」
彼は、まだ私の手を握りしめている。


