私は、顔を上げる。彼の熱い視線とぶつかる。
「何?なにか私に、言いたいことでもあるの?」
「あるっていうか……」
「はっきり言いなさいよ」
長井の手が、私の手をとらえる。
捕えた手に、私の小さな手が収まってる。
手を放してもらおうとして、逆に引き寄せられる。
「俺的には……亜湖が無理してるんじゃないかって。何か苦しい思い出もしてるんじゃないかって思えるんだ。亜湖、昔から、辛いことがあると、何かがむしゃらにやりだすだろ?ずっと心配してたんだ。体壊すんじゃないかって」
私は、思いもよらない言葉に、ポカンとしてしまった。
無理して、具合悪くなったのは誰のせいよ!
「大丈夫よ。そりゃ、受験勉強中は大変だったけど、今は、無茶してないよ。だから、長井が心配することないって、言ってるでしょう?」
「だったら、いいんだけど」
どこが、いけないわけ?
自分でちゃんと立ってるし。もう、一人で困ることなんかない。
資格だって取って、会社に頼らなくたって、生きていける。
ちょっと不器用だけど、何でも、自分でできる。
だから、今さらなんだっていうのよ。
それ以上……私にこれ以上、何をがんばれっていうのよ。


