そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~

いつもの店っていうのは、縄のれんの安い居酒屋のこと。長井と行くのは、いつもこういう店だ。

気取った店に行ってるうちは、彼は本音で話さない。まだ相手に遠慮がある。

長く付き合って行きたい相手とは、友人でも、恋人でもこういう気取らない店に来る。

彼は私のこと、ずっと付き合って行きたい友人と思ってるのかも知れない。


店の中は、適当に混んでいて、話してても他人のことが気にならない。


ビールで乾杯した後、彼は、たまに私の顔を見つめるだけで黙ってしまう。

私の顔をじっと見つめて、何か言おうとして、やっぱりいいや、と小さく首を振る。

話があるんでは?と顔を覗き込んでも、彼は、何でもないよと視線をそらしてしまう。

こういう時、無理に聞き出そうとすると、うまく行かない。
焦らないでゆっくり待つ。


こうしてると、時間が止まったようだね。

こういう、シュチュエーション前にもあったなと思いながら。

あの時は、こんな風に待つの、苦痛じゃなかった。

初めて気持ちを話してくれた時も、彼が話してくれるまで、こうしてじっと待っていた。

彼が話をしないから、間を持たせるために、私はどうでもいい世間話をしていた。