帰る途中で彼が言う。
「やっぱ、敵わないな。俺、あの人前にすると、全然余裕がない」
「そうね。今のところ、課長の方が上手だね」
「ちょっと待って、それ課長の方がいいってこと?」
「そんな……まさか!違うって」
「あの人に比べたら、俺なんか、ガキに思えるだろ?それでもいいのか?」
「確かに、課長のように大人で、何事も、先を読んで行動してくれる方がいいって人もいるけど、私は、そうじゃないよ。相手と一緒に進んでいく方がいい。失敗も、成功も、感動も、後悔も、私は、二人で味わいたい。だから、私は、あなたがいいの」
「本当に?それでいいのか」
「もちろん」
「じゃあ、亜湖!キスさせて……」
「ちょっと待って、ここ会社だって」
「誰も見てないさ、まあ、見られたって構わないけど」
END


