「何の用事?」
優人が、私の代わりに厳しい顔で尋ねる。
「引き受けた資材の事じゃない?」
「なら、俺が行く」彼は、上着を羽織って、すでに歩き出そうとしてる。
「優人、呼ばれてるの私だよ」
「俺は、プロジェクトの担当者だ」
「わかった。一緒に行く?」
「もちろん」
「資材の件、ありがとうございました」
フロアに課長の姿を見つけると、彼は、深々と頭を下げた。
「こっちに来てたのか?」と課長。
「はい。亜湖とは、昨日まで現地で一緒でした」
「うまく行ったのか?よかったな」
彼のけん制にもひるみもせず、答えた。
課長は、私の方を見ていった。さりげなく微笑みまで添えて。
「そう言えば、噂がありましたよね?課長?でも、俺達一緒に住むことになりましたから」彼は、長谷川課長に向かって、一方的に話をしてる。
もう、優人ったら……
「よかったな。それは、おめでとう!!」
課長は、にこにこ笑って、優人の背中をバシーンと叩いた。
「痛っ」
「道理で、きれいになったな亜湖」
頭をポンと叩いてから、見つめられてちょっと恥ずかしい。
「そうですか?ありがとうございます」
「女って嫁に行く前が一番きれいだな。きれいになって。ますます、奪いがいがありそうだ」
課長に、意味ありげに微笑まれて、優人が、固まった。
「あんたって人は……」
「面白いな、お前」
課長にそう言われて、優人が、言葉を失った。
すぐに、課長の部下の人が質問に来て、私達はもう一度お礼を言ってその場を後にした。


