「長井」

「その、長井ってい呼び方もやめろよ」



彼は、私の後ろに回り、そっと抱きしめる。



「頼むから、お前の人生から俺を締め出すな。三年も離れるなんてもう無理だから。っていうか、もう一週間だって無理」


腕に力が入って、ぎゅっと抱きしめられる。頭のてっぺんから、優しくキスされて、彼との壁が溶けて無くなっていく。


「優人……」



「亜湖……もう、どこにも行くな。俺のこと避けるな。亜湖は、もう誰にもやらない。この髪の毛の先から足の指まで全部俺のもの。こんなにきれいな肌に触れるのは俺だけだ」







ほとんど眠らずに、彼の腕の中で迎えた朝、
のんびり、外の大浴場に行こうと思って起き上がったら、


「亜湖?今から、お前の実家に挨拶しに行くから」



「ええっ?実家ってうちの?」



「だって、一緒に住むのに黙ってたらまずいだろ。せっかくすぐ近くにいるのに、またあらためて、別の日にこっちまで来るの無駄だろ?」

いたずらっぽく笑いながら嬉しそうに話す。


「ちょっと、待って。私、親にまだ、何も言ってないよ!」



「じゃあ、びっくりさせてあげようか」