「長井、経理部から預かったデータ渡すの忘れてた」
バッグから、データを取り出して長井に渡す。
「わかった。でも、それ見るのは月曜日でいいだろう?」
彼は、受け取ったまま見ようともしない。
「どうしてよ、せっかく太田さん急いでくれたのに」
「太田さんは、君のために急いたんだろ?」
「そんなはずないでしょ?」
私は、パソコンが入ったバッグと図面を手に持った。早く出かけよう。
「もう、亜湖、俺の話も聞けよ!!」
長井の手が、私のパソコンのバッグを奪って下に置いた。
空いた手で彼は、強引に私を抱き寄せた。
「もう、俺たちここに来てから一度も温泉に入ってない」
腕にぎゅっと力がこもる。
「ん、そうね。少し片付いたら入りましょう」
「仕事が終わったら、俺の言うこと聞いてくれるなら我慢する」
「ん?」
「約束して」
「わかった」


