後で事務所に寄ってください。
そういわれていたので、一回りした後に事務所に寄った。
「長井さん、お休みのところ申し訳ありません」
着物姿の落ち着いた女性が、私達に気がついて、さっと前に出て、丁寧にあいさつをしてくれた。
この人が、この旅館の女将さんだよと長井が教えてくれた。
「素敵なお相手ね」女将が長井の方を見て、笑いかける。
「ありがとうございます」長井がお礼を言ってる。それってわたしのこと?
「さきほど、お部屋の方に挨拶に伺ったんですけど……お散歩にでも行かれましたか?」
「いいえ、明るいうちに外を見ておきたいって、彼女が言うから、ぐるっと一周してきたところ」
「まあ、それはよかったですね。いいお店は、ございましたか?」
「違うよ。設計図持って、旅館の敷地内を境界線に沿って回っただけだから。もう、部屋で寛いでもいないよ」
「あらまあ、長井さんより仕事熱心なのね」
さっきの、若旦那が入ってきた。


