彼が、旅館の施設全体を見渡せる位置に立って言う。
この温泉地は、川に沿って両側に開けていて、土地も山の斜面の傾斜に沿ってゆるやかな坂になっているんだ。
その傾斜を利用して、和風建築が建てられ、各部屋と廊下でつながっている。
図面を広げながら、長井が説明してくれる。
「こうして、建物が建っている姿を、周りの背景と一緒に見ると、まったく違うものに見える」
私も、彼の話に頷いた。
「この旅館は、何百年も前からこうやって温泉宿を営んできたんだ。だから、俺、こんなところに、鉄筋の大きなビルを建てるなんて、もったいないと思うな」
「もったいない?」
景観を損ねるとかじゃなくて?
「ああ、そうなんだ。こうして図面で見ると、この平屋建ては効率が悪くて、
集客を見込むなら十階建てのビルでも建てて部屋数を見込めた方がいい気がするだろ?
だから、前任者は土地の半分を使って十階建ての鉄筋の建物を建てるって計画にしたんだろうな」
この温泉地は、川に沿って両側に開けていて、土地も山の斜面の傾斜に沿ってゆるやかな坂になっているんだ。
その傾斜を利用して、和風建築が建てられ、各部屋と廊下でつながっている。
図面を広げながら、長井が説明してくれる。
「こうして、建物が建っている姿を、周りの背景と一緒に見ると、まったく違うものに見える」
私も、彼の話に頷いた。
「この旅館は、何百年も前からこうやって温泉宿を営んできたんだ。だから、俺、こんなところに、鉄筋の大きなビルを建てるなんて、もったいないと思うな」
「もったいない?」
景観を損ねるとかじゃなくて?
「ああ、そうなんだ。こうして図面で見ると、この平屋建ては効率が悪くて、
集客を見込むなら十階建てのビルでも建てて部屋数を見込めた方がいい気がするだろ?
だから、前任者は土地の半分を使って十階建ての鉄筋の建物を建てるって計画にしたんだろうな」


