「迷路みたい」
一応、旅館内の配置は頭に入れてある。
もちろん、館内のパンフレットも手にしてるし、おまけに、新しい設計図だって持ってるけど、複雑な構造になっていて、1度見ただけでは、理解できない。
「えっと、とりあえずフロントに行かなきゃ」
「それじゃ、遠回りだ」
長井が私の後ろからついてきてあれこれ言っている。
案内図を見て、まごついてたら、今度は、こっちだよと長井に背中を押された。
「最初から全体の出来上がりのこと、考えて建ててないからね。
でも、こうやって建物の中を歩き回るのも、楽しい」
「うん」長井が、はぐれないようにと、手をつないで来た。
さすがに何度も来てるから、彼は館内の構造を、すべて把握してる。
外に出る通用口が見えた。
長井がドアを開けて外に出る。


