「亜湖……俺、二人っきりになることだけ楽しみにしてたのに」
「残念でした。さあ、早く、案内してよ」
「1度温泉に、入ってからにしたら?」
「ダメよ、余計に外に出て歩き回る気なんかなくなるもの。それ、図面だよね。貸して」
「なあ、亜湖、ちょっと待てよ……少しだけ、ぎゅっとしていい?」
耐えきれず、長井が、図面と私の両方を引き寄せてぎゅっと抱き締めた。
「ちょっと、長井、図面がくしゃくしゃになっちゃう……」
「図面なら、ほら、そこに置いて」
「長井、もういい?行かなきゃ……」
彼の指が、私の頭を支えて遠慮がちに唇を重ねて来た。
何度も唇を重ねていくうちに、強烈な欲望で身動きがとれなくなってしまう。
長井ダメだってば。
「長井……待って」
「嫌だ。俺、どれだけ我慢すればいい?こんなに近くにいるのに、君に触れられないなんて、気が狂いそう。キスくらい好きなだけさせて……」
「長井、ちょっと待って、本当に外暗くなっちゃう……ねえ、待って。楽しみは後に取っておきましょう」
「ああ、もう、わかったよ」


