車を降り、宿の仲居さんから、
「いらっしゃいませ!!」と大げさに歓迎された。
別の仲居さんも、長井に声をかけて来て、もうかなりの人と面識があるみたいだ。
「ああ、長井さん、もうお帰りですか?どこにも行かれなかったんですか?」
「彼女が、まっすぐ宿に来たいって言うから」
「ええ?そうでしたか」
と、常連客のような扱いを受けていた。
「お部屋のお荷物は、離に移しておきましたから、そちらにどうぞ」
私の荷物を運んでくれてる仲居さんが言う。
「離れって、そんな……」
「長井さんの働きのおかげですよ。女将からの計らいですよ。そのかわり今夜は、きっちり決めて下さいね」
ベテランの中居さんから、謎のエールを送られて、長井は、恥ずかしそうに照れ笑いしてる。
「離れって、どういうこと」
「さあ、分からない。とりあえず部屋に行こうか」


