「ずいぶん、集中してやってるな」

実際には、画面を見て集中してたわけじゃなかった。

私は、モニタを見ながら、ぼんやりと考え事をしていただけだから、デスクの横に長谷川課長が立っているのに気が付いて慌ててしまった。

「作業中?」

「いえ、大丈夫です」
今朝、長井と話していた件で、調べ物をしていた。
でも、画面がスクロールされず、ただ眺めているだけだったのは、課長にもわかっただろうな。


「終わったら、連絡くれるか?」


「今日は、もうこれでやめにします」

出て行こうとした課長を引き留めるために言った。
これ以上、無理だ。何も手に付かなかった。


課長は、立ち去ろうとして向きを変えたけど、私が引き留めたので、こっちに戻ってきた。

「あれから何も言ってこないから、気になって見に来た」


「課長がですか?私のこと気にしてくださったんですか?」
仕事のことでは、面倒見のよい人だと思うけど、それ以外のことでも気にしていてくれたと知ってうれしかった。


「あんなこと言われれば気になるさ」


紗和には、課長と付き合ってると言ってあるから、不用意なことを言わないように、紗和には、細かいことが話せなかった。

その分、課長を頼ってたけど、友達に聞くように気楽に話しかけられない。

私は、誰にも相談できなくてそんなことでも悩んでいた。