まだ、長井がいるとき、紗和が私のところまでやって来た。

「はい、チケットと宿の場所。一応温泉宿だから、ゆっくり浸かって来たら?」

「そんな余裕があればね」

長井は、後藤課長と打ち合わせすると、席に座るまもなく出て行った。


私は、長井を見送る紗和の横顔を見ていた。



紗和とは、入社式で顔をあわせてから親しくしている。それまでは、特別親しい間柄とは言えなかった。

私が法務部に配属されてから、同じ管理部にいる紗和と、特に親しくするようになった。


彼女の良いところは、付き合いが長いし、気心が知れてるから、私のはっきりしない、優柔不断なところも、きちんとわかってくれてるところだ。

逆に紗和の困ったところは、あの通り顔が広く、誰とでもすぐに親しくなるから、予定が埋まってる事が多いってことだ。

それに、友達が多い癖にメールの返事がなかなか返って来ないことだ。
だから、今日の昼になって慌ててメールを送っても、退社するまでには、返事は来ない。


「あいつ、帰って来たら3人で何か食べに行こう」

「うん」