席に戻ってからも、長井はほっとする間もなく苛ついていた。
設計担当者と休む間もなく電話でやり取りしたり、方々への調整でへとへとになっていた。
終業時間が過ぎ、課長も由奈ちゃんもすでに退社してる。
私はなんとなく帰づらくて、その場に残っていた。
さっき、コンビニに行き、長井のために、夜食のおにぎりとチョコレート、眠気覚ましに冷たいブラックコーヒーを長井のデスクの上に置いた。
「ん?」
「だいぶ疲れてるでしょ?」
「ああ、ちょっとね。空腹で苛ついてるの、バレた?」
「苛ついてるのは、わかったよ」
「そっか、悪い」
長井は、目頭を押さえる仕草をする。
私は、無意識にポケットからハンカチを出そうとした、
ハッとする。ハンカチを貸すのって友達でもやるのかな。
彼は、ありがとうってお礼を言うとコーヒーの缶を目の上に当てた。
「大丈夫?」
「ああ。冷たくて気持ちいい」
長井は、天井を仰ぐようにしてふーっと息を吐いた。
「本当は大丈夫じゃない」長井が声を絞り出すように言う。
「大変なんだね。何か手伝うことある?」
私は、いったん始めた帰り支度を止めて言う。
「ああ、ちょっと、こっち来て」
私は、椅子に座ったまま長井の横に近づいた。
「亜湖?ちょっとごめんな」
ぐいっと、腰に腕を回されて引き寄せられ、抱きかかえられたみたいになった。長井の頭が私の肩にもたれかかって、肩の上に頭をのせる。
「ちょっと、長井。くっつきすぎだって、こんなとこでまずいってば」
彼に、がっちりつかまれていて、動けない。
私たちのグループは、隅にあってパーティションで区切られている。
だから、座っていれば遠目には見えない。
「誰か、入ってきたらどうするの?」
「見られたって構わないよ。ていうか他人なんか、もうどうでもいい」
二人きりの時の甘えた声で言う。
「長井……」
「なあ、俺……亜湖に嫌われるようなことしたか?」


