「まあ、俺が悪かったんだけど。それはいいんとして……亜湖ちゃん」
「はい」
太田さんは、少しためらいがちに言う。
「えっと、亜湖ちゃんて長井と仲いいよね」
「同期ですから」
「同期って言うだけだったら、酔って君に絡んできたとしても、あんなに怒らないだろう?」
「あんなにって?」
「ここ締め上げられるくらい」
太田さんは、ネクタイを締める仕草をした。
「長井が?本当ですか?」
そうなの?彼がそんな態度取ったなんて、聞いたことない。
普段、あの通り人当たりがよくて、穏和な風貌をしてるから、みんなだまされるけど、本当に怒ったら私も近くにいられない。
幸いにも、怒りの矛先を向けられたことはないけれど。
「やっぱり、亜湖ちゃんも長井のこと好きなのかな?」
早く仕事の話をしたいんだけど。っていうのを顔に出さないようにする。
「えっ?太田さん、長井は同期って言うだけですよ」
「ああ……」
「もういいですか?それ、資料ですよね、いただけますか?」
私は、太田さんが手元に持っている資料を渡してもらうように手を差し出した。
「ああ」
受け取るとき、軽く手を握られた。
長井が二人きりにならない様に、気を使ってた理由がやっとわかった。


