「やっぱり違う」
前と同じようになんかできないよ。
彼は、前とおんなじように触れてくれるのに、私の体は、まったく違う反応をしてしまう。
「そんなことない。ちょっと気持ちがすれ違ってただけだって。すぐに元に戻れる」
「すれ違ってただけ?うまいこと言うね、長井」
冗談を言ってみても、すぐに表情が暗くなってしまうのが、自分でもわかった。
「亜湖、ちょっと待ってよ。お願いだから、もう少し考えてくれ。違うって、俺、もうあの時とは違う。後悔してる。あんな言い方して。もっと考えるべきだった」
「長井……あの時、本当は別れようと思ってたんだよね。ちょうどいい時期に転勤になったって。遠くに行って離れてまで、つなぎ止めようとは思わない。置いてきた彼女とのことは、もう終わってる。そうでしょ?」
どうして今になって、思い出したんだろう。
その話を、全然知らない人から偶然聞かされた。
「亜湖……だから、違うって。待てよ」
「その人、長井から、直接聞いたって言ってた。そういったのは覚えてる?」
「亜湖、そんな話どこで聞いた?」
「ごめん……長井。前みたいな気持ちになれない」
「待てよ。そんなの酔った席で言ったことだって。亜湖と離れて、やけになってた。そんなので俺の気持ち判断するなよ……お願いだから亜湖、俺このまま別れるなんて嫌だ」
「長井……」
もう、とっくに薄れたと思ってたのに。
3年経っても傷ついたままだ。
「今だって、遅くない。止めてくれ。頼むからそんな顔するな」
「あなたの言葉、全然、響かない。もう私の心、何も残ってないの」


