長井はとても、優しい人。でも、すごく遠い人。
そんなこと本人の前で言えないか。
「長井、私、やっぱり……」
それに、そういう分かりやすい感情なら相手にぶつけることができる。
でも、今私が感じているのは、まったくそういうのとは、違う感情だ。
「亜湖……俺たち、もう一度やり直せるさ」
私は、体の向きを変えて長井と向き合った。
彼の表情は、真剣そのものだ。
今度は、本気でそう思ってるのかもしれない。
でも、私はどこかで、あなたの言葉を無邪気に信じることができない。
彼は、私のことぎゅっと腕の中抱きしめた。
「亜湖……俺、ずっと、こうやって君のこと抱きしめたかった」
彼の唇が、優しくふんわりとかすめるように触れる。優しく髪に触れて、私の髪の匂いが好きだってよく言ってくれたね。
髪に触れられるのは、まだ何とかなった。
彼は、私の反応を確かめるようにゆっくりと唇を重ねる。
唇が少し触れたときに、すでに違和感を感じた。
とうとう、彼の顔が近づいてきたときに、キスを避けるために顔を横にそらしてしまった。
長井が私の肩をさすって、説得しようとしてる。


