「連絡しないの?」
「こんなじかんに?そろそろ11時よ。課長ならもう寝てるよ」
「亜湖、俺なら寝てない。家についたって連絡が来てないなら、あの人だって心配してるだろ?
大切な人なら、ちゃんと家に着いたのを、確かめてから寝るよ」
彼の真面目な顔を見て、私は、いつも着いたと連絡し忘れてたのを思い出した。
「長井は、そうだったね。遅くなっても連絡しろよって言ってたね。
いつも、ずっと寝ないで待ってたの?」
「それはそうだ。大事な人が、こんなことになってないか、心配だからね」
どうやら彼は、一向に連絡すらしてこない、課長にも不満らしい。
「だから、連絡はもう済んでるって」
「亜湖、いいから電話しろよ。帰るなら、ちゃんと長谷川さんに迎えに来てもらえ」本当、お節介なやつ。
「ちょっと、待って。長井、私を部屋に誘っておいて、課長に迎えに来いって、何よ。雨がおさまったら、すぐに一人で帰るよ。長井、眠いんなら一人で寝て」
「そうじゃないって……」
「洗濯が終わる時間に、タクシー会社に電話する。車なら帰れるでしょう」
「ちょっと待って、俺、亜湖に帰れって言ってる訳じゃない」
「長井、あんたはどう思うか知らない。でも、私達の間では……これでいいのよ」


