そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~

「長井、あの……確かに付き合ってた時は、こうやって、着てるもの洗ってもらったけど、今は、そうは行かないと思うの。私、シャワー浴びたら、帰るつもりだし……」

長井は、またかというように顔をしかめた。

「正気か?シャワーの後にまた、濡れた服を着て雨の中帰るなんて」

「確かに、いい考えとは、言えないけど。シャワーを借りに部屋に上がっただけだし……」


「亜湖、シャワーを浴びてすぐに帰るって事がそんなに重要なのか?」
そんなことに、何の意味があるの?って言いたげに笑ってる。


「えっと、私これでも付き合ってる人がいるし、必要以上に、別の男性の部屋に長居したくないだけ」

別の男性という言葉に、反応するように彼は、向きを変えて私に背を向けた。

「でも、どっちみち今は、外には出られないよ。ここに来て正解だった。大雨と強風で、運転見合せだって」

彼の視線の先に、テレビがある。ボリュームを絞った音声が、電車が運転を見合わせていることと、雨の被害を報じている。


「そうなの?」私は、長井の後ろからテレビの画面をのぞき込む。


「ああ……テレビでやってた。今ごろ電車で帰ってたら、巻き込まれて、駅で足止めされてたよ」


「そうだね……」


長井は、私の横をすり抜けて、バスルームに消えて行った。