賢人がホストクラブを出たのは、朝の6時。

先程の若い男を含めて数人の若い男を連れて道路の真ん中を歩く。

「賢人さん!今日も凄かったですねぇ!」

若い男の一人が賢人を称える。

賢人は、軽く振り向くと言う。

「バカな女から金をかっさらうのが俺達の仕事だろ?当たり前の話さ…」

男の一人が、ヒューと口笛を吹く。

賢人は、前を向き歩きながら言う。

「飯でも食ってくか。」

いつも仕事帰りによる定食屋を指差す。

若い男達は、口々に「あざーす!」「ごちそうさんです!」と言う。

賢人を先頭に定食屋のガラス障子の様な引き戸を開き、のれんをくぐる。

朝だからか元気のない声が店内からする。

「いらっしゃーい。」

店内はガラガラで、カウンターとテーブルは6つあるのにカウンターに一人しかお客はいなかった。

賢人は、店の右手前にある6人がけのテーブルに座る。

若い男達もそれにならってガチャガチャと座る。

ゆっくりと中国人であろう店員がカウンター内から、おぼんに水を6つ持って注文を聞きに来る。

水を賢人と男達の前に1つずつ置くと言った。

「注文なにスル?」

店内で賢人のヘルプに着いていた若い男が言った。

「水が1つ多いよ?」

店員の中国人は、テーブルの水と座っている男の数を見ると、水を1つ手に持って言った。

「注文なにスル?」


賢人は、メニューを見ることもなく言った。

「サバ味噌定食」