オレとアイツ


翔の回し蹴りを俺は避け、その隙に鳩尾に拳を入れる。


翔が引いたので俺は助走をつけて蹴りを入れた。


だけどそれはいとも容易く避けられる。


翔に蹴りを入れられた。


俺たちは距離を取る。


「なぁ翔」


「なんだ?」


「俺、こんな楽しい喧嘩、初めてだわ」


思わず頬が緩む。


あぁ、楽しい。


「お前…そんな顔出来んのか」


「ん?」


「いや、なんでもない」


翔がなんかボソッと言ったけど聞き取れなかった。


俺は仕掛ける。


翔は避ける。


翔が仕掛ける。


俺は避ける。


それの繰り返しだった。


多分1時間くらい経ったと思う。


体力が尽きてきた。


「埒明かない。」


「俺は夢月が成長してくれて嬉しいよ」


「話噛み合ってないんだけど」


「気のせいだ気のせい。」