「頑張ったな。夢月。もう大丈夫だ。俺たちはそんな事絶対ぇしねぇ」
でも翔の言葉は、俺の予想を反していた。
フワリ、俺を強く抱き締めて言葉を震わせる翔。
「……………」
心がジワリとあたたかくなった。
「よし!風呂入るか!」
「ん」
翔も服を脱いで二人で風呂に入る。
「よーしお兄様が背中洗ってやる」
「……………」
鼻歌を歌いながらご機嫌で俺の背中だけではなく頭も身体も全て洗う翔。
「よし!終わり。夢月も俺の洗ってくれても……っておい!」
俺はやっと解放されて湯船へ入った。
ここは確かにあたたかい。
でも、決して心を許したわけではない。
俺が背中を洗うのは後にも先にも海だけでいい。
誰が今日会ったばかりの奴の背中なんて洗うか。
「しゃーねーな。夢月待ってろよ!マッハで洗うからな!」
俺に話しかけてるけど、俺が反応しないから一人でずっと喋ってる絵になってる可哀想な翔。
こいつ絶対残念なイケメンだ。
顔だけ無駄に良い。
きっとモテるはずだ。


