母さんと父さんが最近喧嘩している理由は、父さんがギャンブルで作った借金について。
これが普通のサラリーマンではとてもじゃないけど払える金額ではないらしい。
なんで知ってるかって?
海が寝たあと二人の会話を盗み聞きしていたから。
自分で言うのもあれだけど、俺は頭が良い。
だから、今この状況が把握出来てしまった。
「ふぅん。随分と綺麗な顔したガキだな。これは売れる」
「本当に、これで借金チャラですよね?」
「あぁ。俺ぁ約束は守る男だ。」
「だったらこんな子、好きにして下さい。」
「随分と潔いいじゃねぇか。息子だろ?」
「こんな気持ち悪い子が自分の息子だなんて思ってません」
「かっかっかっ。ガキ、残念だったな」
「…………」
つまり、俺はこいつらの借金返済の為にヤクザに売られたわけだ。
もう、海に会えないかもしれない。
それだけが心残りだった。
別に母さん達になんて思われてようとどうでもいい。
あいつら同様、俺も母さん達を親だなんて思った事一度もないから。
俺の家族は海だけだ。


