びいだま。






……トントン……


ジューーー……





「ん……」



まだ薄暗い景色の中、


小さく刻まれるリズムとお味噌汁の匂いで目が覚めた。




「……あれ、僕……」



気がついたら僕は寝ていたらしい。




荷物の片付け途中で開きっぱなしの段ボールは


端に寄せられて代わりにそこには小さな机があり、


ラップのかかった冷やし中華とメモらしきものが乗っていた。




「起きた時にでも食べて」と、一言書いてある。


多分昨日の夕飯だろう。




「……そういえば」



僕の体はベッドの上にある。



「……叔父さんにお礼言っとかなきゃ」



床で突っ伏して寝ていた僕をベッドに運んでくれたらしい。


おまけに昨日来た時の服じゃなくなってたから


きっと着替えさせてくれたんだろう。







「……そういえば、この音と匂い……


朝ごはんかな」




手をつけていない冷やし中華を


そのまま戻すのは気が引けるが、


夏場に常温で1晩放置していた以上はしょうがない。



下手に食べたら医者にいらないお世話を


またかけることになる。





冷やし中華を片手に僕は部屋の扉を開けた。


何かが扉にあたる鈍い音と


同じタイミングできゃっという声がした。



「あ、ごめ……」



半開きの扉の反対側にどうやら人がいたらしい。



「あ、いえ、大丈夫です、こちらこそすみませ……」




しっかりと開け切った扉のその先には女の子が立っていた。



さらりと揺れるポニーテールはオレンジのシュシュで束ねられていて、


俯いていたその顔を上げると、僕らは同時に息を飲んだ。




「……」



「……なんで……」



まるで、鏡を見ているような気分だった。



「……私たち、そっくり……」