僕は、海の底に立っていた。
深い、深い青に包まれていた。
「……にゃあぉ……なぁおぉ……」
夢かうつつか
猫が鳴いていた。
猫が……泣いていた。
「にゃあお……にゃああぁ……ふにゃぁああ」
哀しさがこみ上げてくる。
深い深い悲しみの淵に囚われたように
猫は泣いた。
真っ白な猫だった。
光加減で金色にも青緑のようにも見える
不思議な目の色の猫だった。
やがてその白い影は上を見上げた。
群青の世界に僅かに垣間みえる空からの光は
その不思議な目を金に輝かせた。
猫は、ゆっくりと暗闇に隠された長い長い階段を
昇っていった。
僕はまだ、この深い青に閉じ込められたまま。


