女は男達が見えなくなると少年の方を向いた、少年はひっと小さく悲鳴をもらし後退りするもすぐ後ろにあった木の幹にぶつかってしまった。

「っ!!!」
その衝撃で先程まで忘れていた額の痛みがまたやってきた。
女はかがみ少年の前髪をかきあげ傷の具合を見た
「血は出てなさそうだね……。鬼坊、私の知り合いに医者がいる。ほら、乗りな。」
そう言うと女は少年に背を向けた、おそらく少年をおぶる気なのだろう。
「鬼坊じゃ、ない……っ。鬼冷、だ。あんたも、人間、なんだろ。助けは、いら、な……。」
少年は痛さに顔を歪めながら途切れ途切れに言葉を発したが痛さに耐えきれなかったか、気を失って力なく木の幹に体を預けた。

「はぁ……。小さい体の割に強情だこと、まぁ仕方もないか。」
女は哀れみの顔を少年に向け、ため息をつくとその小さな体を抱き上げた。
しばらく歩き、開けたところにでると女は目を閉じた。すると背中から茶が混じった白い羽が生えた。
「さて、早く行くか。」
そう言うと女は羽を羽ばたかせ遠くの空に消えていった。