「お止めなさい!!!」
突如として雨が降る森の中、凛とした女の声が響いた。

男も少年もきょとんとして声のする方へ顔を向けると、笠を深く被った振り袖姿の女がいた。
「誰だ!こんなところで何をしている。」
男が今にも飛びかかりそうな剣幕で言うも、女は口元に笑みを浮かべ
「なぁに、いい雨の日だからね。散歩でもしようかと外に出たまでよ。するとどうしたことか一人の鬼坊を羽交い締めにする、大人気ない輩に出会ったまでのこと。」
そう言って女は手を前へ出し男達の方へ向けると、軽くその手を握りしめふっと開くと突然男達を青い炎が包み込んだ。

「あぁあ、熱い!熱いぃい!」
「なんだこれ!一体どこから……!」
水、水をとのたうち回る男達を見て女は口元を袖で隠しくくく、と小さく喉を鳴らし笑った。

少年は一体何が起きているのか分からず角をなくした痛みも忘れその場で座り込んだままだった。
「無駄よ無駄。その炎は私の意志そのもの、そこらの水じゃ消せやしない。」
そう言って女はのたうちまわる一人の男に近づき

「炎が消えたらさっさと失せな、人間。でないとこのままあんたらを燃やし尽くすよ。」
とドスの効いた声で脅した。

炎が消えると男達は一目散に山を駆け下りていった。