「…わかんない…」


何て言ったらいいのか、も…
どうしたらいいのか、も…

わかんないの。



「…どうしよう…」



私の口からこぼれ落ちたのは心の中、そのままの言葉。



「ナナ?どしたん?」



マユの優しい、優しい、声。


「………赤ちゃん………」



やっと出たのはそれだけ。


「…え?…あぁ…。辛かったよね、おろしてとも言えないもんね…。」



マユは私の言ってる“赤ちゃん”をナナコさんの赤ちゃんの話だと思ったみたい。

とっても、

言いづらいけど、

ちゃんと言わなきゃ…。



「違うの…私の…」



「…え?」



マユの言葉は途切れる。
ただ真っ直ぐ見つめるマユの黒い瞳。



「……ナ…ナ?」



その黒い瞳を受け止めて、私は覚悟を決めた。



「私の、赤ちゃん。私、妊娠したみたい。」



笑うでもなく

泣くでもなく


ただ、その事実を口にした。