ダブル・フェイス 〜クールなあいつは泣き虫王子〜


「ユキ、」

なんて、昔みたいに。あのころの毎日のように、笑顔で彼の名前を呼ぶことはできなかった。

誰にも聞こえない声で、小さくつぶやいてみるけれど、ただ騒めきに消えていくだけ。

なぜって、彼の雰囲気が、そうさせたんだ。


まぎれもないユキ本人だということは、すぐに分かった。


あの頃と変わらない、色白の肌と華奢な腕。

やわらかそうな艶のある黒髪。

長い睫毛に縁取られた、切れ長気味の瞳。


だけど、ひとつだけ変わっていた。

わたしの記憶の中のどこにもいなかった、

泣き顔でも笑顔でもない...無感情な顔つきでどこか遠くを見つめる、ユキがいたんだ。