(奏side)


「ひどい顔だな?」



「三浦くんのばかー…!」






彼女は余計に泣いてしまった。






…これは蓮のための涙




そろそろ…ほんとは久下と二人で見る予定だった、

“あれ”の時間だ。



「ちょっと着いてきて?」


泣いている彼女の手を引っ張って、飛行場の屋上に向かった


1番、空に近いベンチに座って、



「今日はさ、今年初めての花火の日なんだよ」



「え!?」







“バーンッ”








久下がそう言った瞬間、少し斜め上に、花火がうち上がった。









「蓮も、見れてるかな?」

 


いいよ今日は蓮でいっぱいで



「うん、見てるよ、きっと」





「いーよ、好きなだけ泣きなよ」







「…三浦くんのばかー…」


また涙腺が緩んだのか、彼女は泣き始めた。



久下の顔をそっと俺の肩に乗せて




「悲しい時は絶対俺を頼って

俺は絶対、離れないから」





「…ほんと?」




「俺が嘘ついたことある?」




「ないね

…ありがとう、三浦くん迷惑かけてごめんね」





「…別に迷惑じゃねーし」




そう呟いた俺の声は、




“バーンッ”





とうち上がった、花火のせいで久下の耳に届くことはなかった