(うーん……どうしよう)


あっちをうろうろ、こっちをうろうろ。優柔不断な自分が嫌になる。


(この色もいいけれど、あのデザインも捨てがたい……)


なかなか決心がつかず悩んでいると、背後から声がかけられた。


「お客様、お手伝いいたしましょうか?」

「ひゃっ……!」


突然現れた髪型までバッチリ決めたスーツ姿の店員さんを見て、私の息は止まりそうになった。


「あっ、いえっ、ケッコウですっ!」


ーーそこからの記憶はほとんど無い。
気が付いたらどうにか自分の部屋まで帰って来ていて、床に座り込んでいた。


「またやっちゃった……」


思わず膝を抱えると、ため息が出た。
今日に始まったことではない。こんなことを始めて、今日で3日になる。どうにも、あのきらきらした雰囲気が苦手なのだ。

抱えた膝に押し付けたままの頭を横に動かして、ちらりとテーブルの上を見ると、見慣れた卓上カレンダーが視界に入った。月ごとに異なる風景写真が背景となっていて、疲れた毎日に癒しをくれる。今月は深みがあるのに透き通るような色をした海の写真。
普段なら、時折それをぼんやり眺めて想像の中で旅行をしてしまう勢いなのだが。

私は、小さく丸を付けた日付を何度も何度も確認する。


「あと一週間しかない……」


明日こそは頑張ろう。素敵なプレゼントを見つけるんだ。
暗示をかけるように、そう自分に言い聞かせるしかなかった。今の私には癒しなど遠い存在なのだ。それは何故か。


ーーもうすぐ、染谷くんの誕生日がやってくる。