・・・・・


ーー高瀬くんも、不安だったのかな。

少なくとも私の話を聞いてくれて、助言もしてくれて。こちらが一方的に頼ってばかりだと思っていたが、自分と重ねることで少しでも勇気を持ってくれていたのなら。

高瀬くんと同期で良かったと思う。


……思うけれど。
いくら言いにくいからと言って、こんなに大事な報告をしていなかったとは。仲の良い染谷くんにはてっきり報告済みだと思っていたのに。仲が良いから言えなかったのかも知れないが。


高瀬くんはばつが悪そうに、小さな声で問いかける。


「染谷、まさかずっと勘違いしてた?」

「……してた」


ぶすっとした顔で呟く染谷くんが、いつもは見られないかわいさを伴っていて、こんな空気なのに少しだけ笑ってしまった。


「そんな勘違いするの、染谷くんくらいだよ。私、全然モテないのに」

「何言ってんだよ。……松井は、か」


(……か?)


途中で喋るのを止めた染谷くんを見上げると、口を開けた状態で静止していた。目が合うと、ぎゅ、と腕の力が強まって。


「……かわいいよ」

「……」


至近距離で放たれた言葉に、意識を飛ばしそうになった。
かわいいだなんて、言われたことがあるのは子どもの頃くらいだった私には、刺激が強すぎたようで。


「お2人さん」


大げさに咳払いをして、高瀬くんが声をかけてくる。


「ーーノロケなら会社の外でやってくれないか? 飲み物買いたいやつらがさっきから引き返してるんだけど」

「……」


ずっとドア開いてたぞ、と笑いをかみ殺した高瀬くんの言葉に、真っ赤になったのは私だけではないようで。
目の前の染谷くんも、頭をかきながら口ごもっていた。