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「高瀬くん」


通路で声をかけると、振り返った高瀬くんの顔がにやけている。まるで私が話しかけに来ることが、前もってわかっていたような反応だ。


「松井」

「すごいの作ったね! ありがとう」

「まあ、俺らシステム部の手にかかればざっとこんなもんよ」


途端に得意気に話すので、吹き出してしまった。けれど本当にありがたい。他の仕事の合間を見て、社内システム、それもピンポイントでお客様相談室専用のシステムを作ってくれるなんて思ってもいなかったからだ。


「何か不具合見つけたら、いつでも言って」

「うん」

「あとさ。……染谷にも声かけろよ」

「え? 染谷くん?」


そこで何故染谷くんの名前が出るのかわからず、きょとんとしてしまった。そんな私を見て、少しだけ意地悪そうに笑う高瀬くん。


「松井は知らないと思うけど。あのシステム提案したの、染谷なんだ」

「え」


そんなこと、聞いていない。染谷くんは何も言っていなかったし、そんな素振りも見せていなかった。思い浮かぶのは、いつものあの優しい顔。


ーー最近、見てないな。


何だか、とても懐かしい。
離れようとすればするほど、私の心の中を占める割合が大きくなっていく。
会っていない分、会いたいという気持ちがどんどん膨らんでいく。


「……ありがとう、高瀬くん」

「ん」


高瀬くんの目が『頑張れ』と言っているように見えた。