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たまにメールを交換するくらいで、染谷くんとはあの日から会っていない。

営業部フロアには立ち入ることのできない事情ができてしまった私は、ひっそりといつも以上に大人しく過ごしていた。


「今日は結構疲れたなあ……」


ガチャリとドアを開けると、先客はいないようだった。私は休憩ルームへ入り、自販機の前へ行く。


(様子を見に行くなんてことをして、また目立ってはいけない。染谷くんにはこれ以上迷惑をかけないように……)

「松井」


そのまま佇んでいたとき、背後から声をかけられた。


「わっ! た、高瀬くん」

「買わないの?」


びっくりした、と思わず呟いてしまった。
それなのに高瀬くんは悪びれる様子もなく、どこ吹く風といった表情をしている。そのまま隣の自販機に硬貨を入れると、悩む素振りも見せず缶コーヒーのボタンを押した。


ーーガコン。


高瀬くんはしゃがんでそれを取り出すと、そのままの体勢で私の方を見上げてくる。


「松井さあ。染谷の誕生日プレゼントに、ネクタイあげただろ」

「なっ……何で知ってるの?!」


ハンカチのことは室長に話してあったが、ネクタイのことは誰にも言っていない。しかし、染谷くん本人から聞いたにしては随分不確定な話し方だ。

そう不思議に思っていると、高瀬くんは立ち上がって私の方に顔を近付けてきた。彼は私よりも頭ひとつ分は背が高いため、かがみ込まれるとなかなか迫力がある。

戸惑う私の反応が面白かったのか、にやっと笑った表情のままそっと小声で囁いてきた。


「本当分かりやすいよなあ、あいつ」

「え……?」

「ここ最近毎日同じネクタイしてるんだって」

「毎日、同じ……」


高瀬くんのその言葉に、一瞬思考がフリーズした。