「ん、思ったよりヤバイかも。俺は別にいいんだけど遅刻したらあんた困るでしょ?」



「え?」



突然のことで何も理解出来ないまま祭莉の体は宙に浮く。



「ひゃあっ!」



どうやらお姫様抱っこをされてるらしく、体が浮いているという謎の恐怖から、ギュッと朔夜にしがみつく。

そして朔夜自身も何かの力によって浮いて、ものすごい速さで空を駆け抜けた。



「⋯着いた。大丈夫か?」



「はい、なんとか大丈夫です⋯」

吸血鬼だからなのだろうか、朔夜は息一つ乱れていない。凄いなぁ、と思っていると朔夜の少し骨ばった人差し指が唇に触れた。


「敬語⋯いいから⋯⋯。」



「う⋯頑張りま⋯頑張るね⋯!」



すると、朔夜がふ、と微笑んだ。

目の前には大きな校舎が堂堂(ドウドウ)と佇んでいた。